ピラティス

ピラティスの呼吸の仕方|NESTA-PFT取得トレーナーが解説

ピラティスを始めた人が最初につまずくのが「呼吸」です。

「息を吸うタイミングがわからない」「呼吸を意識すると動きが止まる」「そもそもヨガと呼吸が逆で混乱する」——レッスンでこうした声を何度も聞いてきました。

ピラティスにおいて呼吸は、動きの「おまけ」ではありません。呼吸そのものが体幹を安定させるエクササイズであり、ここを外すとどれだけ動いても効果が出にくくなります。

私はNESTA公認パーソナルフィットネストレーナー(NESTA-PFT)として指導してきましたが、動きが変わらない人ほど呼吸が浅い、というのは現場で繰り返し見てきたことです。

この記事では、ピラティスの胸式呼吸のやり方と、つまずきやすいポイントの直し方を解説します。

(本記事の公的情報の参照日: 2026年7月26日)

ピラティスの呼吸は「胸式呼吸」

ヨガの腹式呼吸との違い

ピラティスで使うのは胸式呼吸、ヨガで一般的に使われるのは腹式呼吸です。同じ「深い呼吸」でも、動かす場所と目的が違います。

ピラティス(胸式呼吸) ヨガ(腹式呼吸)
ふくらむ場所 肋骨まわり(横と背中側) お腹
お腹の状態 薄く保つ(引き込んだまま) ふくらませる
主な目的 体幹の安定・動きの準備 リラックス・鎮静
使われ方 活動の準備に向く 鎮静に向くとされる

なお、呼吸法について「自律神経が整う」「交感神経・副交感神経が切り替わる」といった説明を見かけますが、当サイトではこの言い回しを使いません。個人が体感として「落ち着いた」と感じることと、自律神経の働きが測定可能なレベルで変わることは別の話であり、後者を断定できるだけの根拠は一般向けの運動指導の範囲では示されていないためです。上の表も「そういう場面で使われやすい」という用途の整理として読んでください。

ヨガ経験者がピラティスで戸惑うのは、この「お腹をふくらませない」という点です。腹式呼吸に慣れているほど、吸う息でお腹が前に出てしまいます。

なぜ胸式呼吸を使うのか

理由はシンプルで、お腹を薄く保ったまま呼吸することで、体幹のインナーマッスルが働き続けるからです。

お腹をふくらませると腹横筋(お腹をコルセットのように囲む筋肉)はゆるみます。ピラティスは動いている間ずっと体幹を安定させておきたいので、お腹をゆるめない呼吸を選んでいるわけです。

うたぴん
「ヨガとピラティス、どっちの呼吸が正しいんですか」と聞かれることがありますが、どちらも正しいです。目的が違うだけ。リラックスしたい夜は腹式、体幹を使いたいレッスン中は胸式、と使い分けられるようになると、両方の練習が一段深くなります。

胸式呼吸のやり方【4ステップ】

ステップ1:肋骨に手を当てる

あぐらか、膝を立てて仰向けになった姿勢で、両手を左右の肋骨の側面(脇腹の少し上)に当てます。手のひら全体で肋骨を包むイメージです。

最初は必ず手を当ててください。触覚のフィードバックがあるかないかで、習得スピードがまったく違います。

ステップ2:鼻から吸って、肋骨を横に広げる

鼻から息を吸いながら、当てた手を左右に押し広げるように肋骨をふくらませます。

このとき意識するのは「前」ではなく「横と後ろ」です。胸を前に突き出すと肋骨が開いて反り腰になりやすいので、背中側にも空気が入る感覚を探してください。

お腹はふくらませません。薄いまま保ちます。

ステップ3:口から細く長く吐く

口をすぼめて、細く長く吐き切ります。ストローで息を出すイメージです。

吐きながら、広がった肋骨が下がって閉じていくのを手で感じてください。このとき自然にお腹が薄くなり、腹横筋が働きます。ピラティスで「吐く息で動く」動作が多いのは、この安定した状態で動きたいからです。

ステップ4:吸う4カウント・吐く6カウントで整える

慣れてきたら、吸う4カウント・吐く6カウントを目安にします。吐く時間を長くするのは、吐き切らないと次に深く吸えないためです。

まずは1日5回、2〜3セットで十分です。

うたぴん
指導していて一番多いのは「吐き切れていない」ケースです。吸うことばかり意識して、肺に息が残ったまま次を吸うので、どんどん浅くなって肩が上がってしまう。呼吸は吐くほうが主役だと思ってください。しっかり吐けば、吸う息は勝手に入ってきます。

つまずきポイントと直し方

肩が上がってしまう

最も多い失敗です。肋骨を広げようとして、首や肩の筋肉で胸を持ち上げてしまっています。

直し方:仰向けになり、床に肩甲骨をつけたまま練習します。床が「肩を上げない」ガイドになってくれます。それでも上がる場合は、吸う量を7割に減らしてください。全力で吸うと必ず肩に力が入ります。

お腹がふくらんでしまう

腹式呼吸の癖が残っているパターンです。

直し方:片手をお腹、もう片手を肋骨に当てて練習します。お腹の手が動かず、肋骨の手だけが動く状態がゴールです。

動きながらだと呼吸を忘れる

呼吸単体ではできるのに、エクササイズが始まると止まってしまう——これは順序の問題です。

直し方:呼吸に動きを合わせるのではなく、動きに呼吸を合わせようとしないこと。まず呼吸のリズムを作り、そのリズムに動きを乗せます。どうしても難しければ、一度動きを止めて呼吸だけ整え直してから再開して構いません。止まることより、力んだまま続けるほうが問題です。

息を止めてしまう

集中すると無意識に止めてしまう人はとても多いです。血圧が上がりやすく、体幹も固まってしまいます。

直し方:きついポーズほど「声に出して数える」のが有効です。声を出している間は息を止められません。

うたぴん
私自身、産後に体を立て直したときは、最初の2週間は呼吸のエクササイズしかしませんでした。強度としてはほぼゼロですが、それでも「体幹に意識を向ける練習」としては十分です。動けない時期でも呼吸だけは練習できるので、忙しい人ほどここから始める価値があります。

呼吸の練習を続けるとどう変わるか

胸式呼吸が身につくと、次のような変化が期待できます(効果には個人差があります)。

  • 体幹が安定して、動きの質が上がる:同じエクササイズでも効いている場所がはっきり感じられるようになります
  • 姿勢を保ちやすくなる:肋骨と骨盤の位置関係が整い、反り腰・猫背の負担が減ります
  • 気分の切り替えに使える:呼吸に意識を向ける時間は、それ自体がリフレッシュになります

なお、ピラティスそのものの効果検証としては、慢性腰痛に対するコクラン・レビュー(Yamato TP, et al. 2015, CD010265)が代表的です。そこでは一定の効果が示唆される一方、エビデンスの質は低〜中程度で、他の運動より優れているとまでは言えないと結論づけられています。呼吸を含むピラティスの練習も、この温度感で受け取るのが正確です。

一方で、注意しておきたいこともあります。呼吸法は医療行為ではありません。息苦しさ・めまい・動悸などの症状がある場合は、呼吸法で対処しようとせず医療機関を受診してください。 また、練習中に手足のしびれや強いふらつきが出た場合は、過度な換気になっている可能性があるのでいったん中止し、普段どおりの呼吸に戻してください。

よくある質問(FAQ)

座位で呼吸を整える女性(イメージ)

Q. 日常生活でも胸式呼吸をしたほうがいいですか?
A. その必要はありません。日常はリラックスしやすい自然な呼吸で十分です。胸式呼吸は「体幹を使いたい場面のスイッチ」と考えてください。

Q. 鼻から吸って口から吐くのが苦しいです。
A. 鼻づまりなどで難しければ、口から吸っても構いません。優先すべきは吸う経路より、肋骨が広がっているかどうかです。

Q. マシンピラティスでも呼吸は同じですか?
A. 基本は同じです。マシンは動きをサポートしてくれる分、呼吸に意識を向けやすいので、呼吸が苦手な人にはむしろマシンから入るのも一つの手です。

Q. 胸式呼吸ができるようになるまで、どのくらいかかりますか?
A. 個人差が大きいところですが、1日5回×2〜3セットを続けた場合、肋骨が動く感覚をつかむまでに2〜4週間かかる人が多い印象です。手を当てずにできるようになるのはその先だと考えてください。

Q. 呼吸の練習だけで骨盤底筋も使えますか?
A. 骨盤底筋は横隔膜と連動して動くため、正しい呼吸そのものが入り口になります。詳しくはピラティスで骨盤底筋は鍛えられるかで解説しています。

Q. 妊娠中や産後でも呼吸の練習はできますか?
A. 産後については、開始してよい時期を必ず産科医に確認してください。妊娠中も同様に主治医の判断が優先されます。時期の考え方は産後ピラティスはいつから始められるかにまとめています。

まとめ

  • ピラティスは胸式呼吸、ヨガは腹式呼吸。目的が違うだけでどちらも正しい
  • 吸う息で肋骨を横と後ろに広げ、お腹は薄いまま保つ
  • 吐く息を長く、吐き切ることを優先する
  • 肩が上がる・お腹がふくらむ場合は、手を当てて仰向けで練習し直す
  • 「自律神経が整う」といった断定はせず、用途の違いとして理解する
  • 息苦しさやめまいがある場合は自己判断せず医療機関へ

呼吸はピラティスの土台です。地味な練習ですが、ここが変わると他のすべてのエクササイズの手応えが変わります。まずは1日5回から始めてみてください。

呼吸を含めたピラティスの基本を通しで知りたい方は、ピラティスとヨガの違いピラティスで期待できる効果もあわせてご覧ください。

参考にした主な情報

うたぴん
[編集者プロフィール]
NESTA公認パーソナルフィットネストレーナー(NESTA-PFT)
現在はフリーランスで活動する1児の母。学生時代は陸上競技で長距離に取り組み、卒業後はNESTA公認パーソナルフィットネストレーナーとして月間100人以上のクライアントのカラダメンテナンスに従事してきました。現在は育児と仕事の合間にピラティスへ通い、忙しい毎日のなかで続けられるウェルネスを実践しています。「自分に合った運動を、無理なく今の暮らしに取り入れる」——自身の経験をもとに、初心者や子育て中の方の目線でヨガ・ピラティスの情報をお届けしています。
うたぴん
執筆・編集
うたぴん
NESTA公認パーソナルフィットネストレーナー(NESTA-PFT)
現在はフリーランスで活動する1児の母。学生時代は陸上競技で長距離に取り組み、卒業後はNESTA公認パーソナルフィットネストレーナーとして月間100人以上のクライアントのカラダメンテナンスに従事してきました。現在は育児と仕事の合間にピラティスへ通い、忙しい毎日のなかで続けられるウェルネスを実践しています。「自分に合った運動を、無理なく今の暮らしに取り入れる」——自身の経験をもとに、初心者や子育て中の方の目線でヨガ・ピラティスの情報をお届けしています。